第21回 世界で通用するか
※本誌『週刊ホテルレストラン』毎月2・4週に連載中
少し前の話になりますが、広島県呉市で開催された「瀬戸内歴史海道シンポジウム」に参加しました。広島には何度となく足を運んでいるのですが、呉に行くのはこれが初めて。昔から軍港として栄えた町とあり、いたるところにその歴史が刻まれ、非常に魅力溢れる場所でした。
中でも「大和ミュージアム」には、世界一の軍艦「大和」を忠実に再現した約30メートルの巨大模型があるのですが、それを見に年間約100万人以上の来場者が国内外から訪れると聞いて驚きました。まさに日本の技術力の象徴であり、誇るべき観光資源なのです。
加えて、瀬戸内には宮島や厳島、直島といった個性あふれる約4000の島があり、また、来年から始まる大河ドラマ「平清盛」の舞台とあって、今後注目を集めていくと期待されています。今回のシンポジウムでは、こうした観光資源が点在する瀬戸内を、いかにルート化し、世界に発信していくかというのが議題でした。
私がこのシンポジウムで皆さんに伝えたことは、“世界の中の瀬戸内”という視点でプロモーションを考え強化しなければいけないということ。これからは国際競争の時代です。したがって、瀬戸内は、低コストで楽しめるようになったエーゲ海クルーズや、セーヌ河、アマゾン河の川下りツアーといったものと競っていかねばなりません。国内外にたくさんある選択肢の中から消費者に選ばれるだけの力をつけるんだ、という発想に立って開拓していかないといけないのです。
瀬戸内の魅力については、かれこれ30年以上語られていると思います。そのため、これからさらに飛躍していくためには、何が課題として残っているのかを整理していかないと、次のフェーズには入れないのです。
消費者は、“日本の中の瀬戸内”でなく、“世界の中の瀬戸内”として見ています。そこで選ばれるためには「キラーコンテンツ」を作る必要があるでしょう。つまり、そこでしか体験できないもの、そこでしか見られない素材です。
日本にはたくさんの魅力がありますが、それが海外のマーケットでどれだけ通用するか。魅力というのは供給側であるサプライヤーが決めるのではなく、ユーザーであるお客さまが決めるものですからね。常にユーザーの視点を意識し、世界の観光地と対等に闘えるだけの力をつけなければなりません。
※次のアップは、6月4週に「第23回」を予定しております。