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  1. 観光庁長官 溝畑宏の観光大和魂

観光庁長官 溝畑宏の観光大和魂

第13回 観光が守るもの

※本誌『週刊ホテルレストラン』毎月2・4週に連載中

 観光によって守られる文化や歴史、感動があります。
 例えば20年以上も前から当たり前のように日本で開催されてきたF1ですが、長引く不況のあおりを受け自動車産業は低迷し、スポンサーの確保も難しくなっています。そのため、2012年以降の日本グランプリ開催が危ぶまれているのです。

 そこで、今年、初めて観光庁が後援という形で協力。三重県鈴鹿市と関係団体と一緒に協議会を設立。また、国土交通大臣が表彰式プレゼンテーターとして出席し、国を挙げてF1を応援するという姿勢を明らかにしました。

 実は、このF1の危機を知らせてくれたのは、日本人ドライバーの小林可夢偉選手でした。
「僕は子どもの頃からF1マシンに乗る中島 悟さんや鈴木亜久里さんを見て、たくさんの夢をもらいました。今度は僕が、未来の子どもたちに夢や頑張ることの意味を伝えたい。だから、絶対にF1の火を消してはいけないんです」

 そう熱弁する彼を見ていて、「ああ、こんなに素晴らしい若者の想いを壊したらあかん」そう思ったんです。実際、本戦には約10万人の観客が集まり、海外のメディアがいくつも来ていました。その情報発信力は図り知れません。私たちは危うく、この観光資源を失うところだったのです。

 それから数日後に行った札幌では、長野オリンピックで金メダルを獲った船木和喜選手に会いました。船木選手いわく、かつて道内に126あったジャンプ台は、20台にまで激減しているとのこと。彼も小林選手と同じように、ジャンプを通して観光を盛り上げ、観光を通してジャンプを盛り上げたいと語っていました。

 F1もジャンプもそうですが、観光をツールとして使うことで、一度消えかけた火を再び起こすことができます。北海道でジャンプ台を見学するパッケージ商品をつくれば、そこに子どもたちが訪れる。そしてジャンプの迫力に触れ、感動をする。その中からスキーをしようと思う人が生まれる。競技人口が増える。それが地域全体の活性化につながる。こうして、WIN×WINのサイクルが出来上がっていくんです。単なるお金儲けのためだけではありません。子どもの夢を育んだり、文化を継承したりと、大きな波及効果があるのです。

 私は、観光振興によって、そこに携わる多くの人たちの想いを守りたい、そう思います。
(12月4週号より)

※次のアップは、2月4週に「第15回」を予定しております。
 「第14回」は、ホテレス本誌1月14日号をご覧ください

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