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  1. 世界のリーディングホテル

世界のリーディングホテルVOL68
マンダリン オリエンタル、バンコック Mandarin Oriental,Bangkok

週刊ホテルレストラン 2014年3月28日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。これまで多くのホテル紹介本が出版されてきたが、そのほとんどが現地のホテルと事前に取材の連絡を取り合い、プロのカメラマンや通訳、そのほか大勢を連れ立っての大名取材であり、宿泊は省略といったことも多々であった。本連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する。

 1980年代、米国金融雑誌「Institutional Investor」の世界ベストホテルランキングで、何年にもわたり連続1位に輝いた伝説的名門ホテルである。1876年に創業以来、タイ・バンコクを代表する迎賓館的役割を担ってきた「OrientalHotel」が前身である。1974年にマンダリン・オリエンタルグループ傘下に入った後も、誇りの“ オリエンタル・ホテル” の名を冠していたが、2008年に現在の「MandarinOriental, Bangkok」に改称している。(以下、MO/BK)

 オリエンタルの歴史を彩るのが、このホテルを愛した文豪たちである。サマセット・モーム、ジョセフ・コンラッドなど数多くの作家がホテルに滞在し、ここで執筆を続けた。コロニアル風の旧館オーサーズ・ウィングは文豪たちに敬意を表し“ 作家の館”と称され、2階にはサマセット・モームなど彼ら作家4人の名を冠したスイートが残されている。書棚に並べられた文豪たちの作品に思いを馳せて「Author's Lounge」で頂く優雅なアフタヌーンティーは、実に贅沢な時間の過ごし方だ。また、隣接するガーデン・ウィングのトップフロアにはフレンチの「Le Normandie」があり、正統派のフランス料理を堪能できる。

 MO/BK は1976年に最新の本館リバー・ウィングを加え、35室のスイートと358室のゲストルームを擁すアジア屈指のホテルである。民族衣装のドアマンに導かれ本館ロビーに入ると、天井から梵鐘のように釣り下がる数多くのタイ・スタイルの優美な大風鈴に目を奪われる。ロビーラウンジからチャオプラヤ川に向かう屋外回廊の右手にはオールデイダイニング「The Verandah」とメインバー「TheBamboo Bar」が並び、2階部分にはシーフードの「LordJim’s」がある。一方、左手には緑豊かな庭園に大小二つのスイミングプールを用意している。河畔のテラスには観光客に人気の「Riverside Terrace」があり、そこからホテル専用の渡し船が対岸に連絡している。渡し船が向こう岸に着くと、伝統的タイ料理の「Sala Rim Naam」があり、毎晩披露される伝統のタイ舞踊が好評だ。また、100年前のチーク材で家屋を復元したスパ「The Oriental Spa」は技術の評価と共に人気が高い。

 MO/BK は先の大戦中、日本の帝国ホテルが運営を委託された時期もあったが、現在に至るまで世界のホテリエがそのサービスの高さを認めるホテルだ。そこには宿泊客に感動を与えた数々の“ 伝説や逸話” が勲章として残されている。その道のプロが絶賛する究極のホスピタリティーが今も生きる、世界でも数少ない名門ホテルと言えよう。

筆者 小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健(株)代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。JHRCA、日本ホテルレストランコンサルタント協会理事。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

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