世界のリーディングホテルVOL57
マンダリンオリエンタル クアラルンプール Mandarin Oriental,Kuala Lumpur
週刊ホテルレストラン 2013年10月11日号掲載
世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。これまで多くのホテル紹介本が出版されてきたが、そのほとんどが現地のホテルと事前に取材の連絡を取り合い、プロのカメラマンや通訳、そのほか大勢を連れ立っての大名取材であり、宿泊は省略といったことも多々であった。本連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する。
マンダリンオリエンタルクアラルンプール(以下MO/KL)はクアラルンプールのランドマークであるペトロナスツインタワーに隣接し、目の前は広大なKLシティーパークの緑が映える絶好のロケーションに立地している。この辺りはKLCC「Kuala Lumpur City Centre」地区と呼ばれ、伊勢丹や紀伊国屋も入るショッピングモールやコンベンションセンターも含めたマレーシア最大級の複合施設である。
MO/KLは隣接するペトロナスツインタワーとは密接な関係にある。タワーは地上452m、88階建ての超高層ビルで、ツインタワーとしては現在も世界一の座を保っている。そして、MO/KLは複合施設KLCCの宿泊施設部門を担っており、どちらも1998年に合わせて開業している。KLCCがオープンされる以前は、高級ホテルの先駆けとなった旧リージェントをはじめリッツカールトン、ウェスティンなど多くのホテルは繁華街のブギッ・ビンタン地区に集中していた。そこは道路が狭い上に複雑に入り組んでおり交通渋滞で難儀していたが、最近はグランドハイアットなど新規開設の大型ホテルは区画整理がなされたKLCC地区に移行してきている。
MO/KLは602室を数えるゲストルームと41のスイート、そして51のレジデンスを擁する大型高級ホテルだ。ホテルはL字形をした30階建ての建物で、客室の眺めによってパークビューやペトロナス・タワービュー等にカテゴリーが分かれる。筆者にアサインされた部屋は「Deluxe Park View Room」で、KLシティーパークやスイミングプールを望む約40m²の広さの客室だ。エントランスホールやレセプションカウンターは充分な広さを確保し、エレベーターホールには漢字をモチーフにしたお馴染みの扇を掲げるなど東洋趣味の雰囲気が漂っている。ロビーを真っすぐ進むと、シティーパークに面したラウンジ「Lounge on the Park」がありアフタヌーンティーで賑わっている。左手にはオールデイダイニングの「Mosaic」があり、和食を含めて世界各国の料理が楽しめる。そのほかファインダイニングの「Mandarin Grill」、広東料理の「Lai PoHeen 麗寶軒」、日本料理の「わさび・ビストロ」など館内には9軒のレストラン・バーがあり、ゲストのあらゆる要望に応えている。スパは8室のトリートメントルームを備えた「The Spa at MandarinOriental」があり、フィットネスやエアロビクススタジオも併設されている。ここの屋外プールは人気が高く、クアラルンプールの高層ビル群を望み終始賑わいを見せている。
MO/KLは前述したようにKLCCにあるペトロナスツインタワーとセットでオープンし、抜群の立地や話題性からしてその成功が約束されていたと言える。しかし、それに甘えることなくハード・ソフト面でゲストへの配慮を心掛け、常にホスピタリティー意識の向上を図っている。
筆者 小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健(株)代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。JHRCA、日本ホテルレストランコンサルタント協会理事。
※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel