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  1. 世界のリーディングホテル

世界のリーディングホテルVOL84
グランドホテル ストックホルム Grand Hotel Stockholm

週刊ホテルレストラン 2014年11月28日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。これまで多くのホテル紹介本が出版されてきたが、そのほとんどが現地のホテルと事前に取材の連絡を取り合い、プロのカメラマンや通訳、そのほか大勢を連れ立っての大名取材であり、宿泊は省略といったことも多々であった。本連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する。

 “水の都”と称えられる美しいスウェーデンの首都ストックホルムを代表する名門ホテルが、1874 年創業の「GrandHotel Stockholm」である。このグランドホテルとノーベル賞授賞式との関係は大変深く、1901 年に第1 回ノーベル賞が授与されて以来ノーベル賞受賞者たちの定宿として利用され、セオドア・ルーズベルトをはじめ数多くの偉人、文豪たちが投宿している。以来、ノーベル賞の受賞者とその家族は全員グランドホテルに宿泊する伝統が今も脈々と受け継がれている。

 ノーベル賞は1901 年、スウェーデンの科学者AlfredBernhard Nobel の遺言に基づき設立され、彼の命日である12 月10 日に授賞式が行なわれる。文学賞受賞者はホテル最上階ノーベルと家族の肖像画などが飾られる「NobelSuite」に、ほかの受賞者は王宮を眺望するホテル正面側の部屋に宿泊するのが慣例と言われる。期間中に行なわれる「聖ルチア祭」には、聖ルチアに扮した少女が受賞者の部屋に入り、歌を歌いながらルチア・ブレッドとコーヒーを出すという。この遊び心のあるサプライズは、連日多忙なスケジュールを強いられる受賞者の心を癒やす、ホテルからの心温かいもてなしとして愛されるエピソードである。

 グランドホテルは3棟の異なる建物から構成され、スイート34 を含む全278 室のゲストルームを擁す大型のホテルである。筆者にアサインされた部屋は「Premium DoubleRoom」で、王宮を望む約45m²の気品ある客室だ。景色の良いメインダイニング「The Veranda」では伝統のスモーガスボードを堪能できるが、ミシュラン星付きレストランの「Mathias Dahlgren」もお勧めだ。店内はビストロ風の「Matbaren」と、正統派ガストロノミーの「Matsalen」とに分かれている。エントランスホール奥に国王カール16 世グスタフの肖像写真が掲げられ、その手前にホテルの生みの親で、フランス人シェフのRegis Cadier から名付けたエレガントなバー&ラウンジ「The Cadier Bar」がある。旧館にあるスパ「The Nordic Spa & Fitness」では本場のサウナやスウェーディッシュ・マッサージを楽しみたい。

 旧市街のガムラ・スタンにある王宮から見ると、美しい入り江の向こうに壮麗なグランドホテルの建物が望める。ノーベル賞授賞式と公式祝賀晩餐会は現在ストックホルム市庁舎で催されるが、1930 年まではグランドホテルにある「鏡の間」で行なわれていた歴史がある。グランドホテルはノーベル賞受賞者を迎える伝統と品格を備えた、世界に誇る名門ホテルと言えよう。

筆者 小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健(株)代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。JHRCA、日本ホテルレストランコンサルタント協会理事。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

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