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  1. 世界のリーディングホテル

世界のリーディングホテルVOL65
ホテル ザッハー ウィーン Hotel Sacher Vienna

週刊ホテルレストラン 2014年2月14日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。これまで多くのホテル紹介本が出版されてきたが、そのほとんどが現地のホテルと事前に取材の連絡を取り合い、プロのカメラマンや通訳、そのほか大勢を連れ立っての大名取材であり、宿泊は省略といったことも多々であった。本連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する。

 ザッハートルテ「Sachertorte」はウィーンを代表する名物菓子の「トルテ」であり、世界で最も有名で高貴な“ チョコレートケーキの王様”と称される。“ 会議は踊る” で有名なメッテルニヒに仕えた料理人の1人、フランツ・ザッハーが1832年に考案した菓子で、瞬く間にウィーン中に評判が広まっていった。後に次男のエドゥアルト・ザッハーは、76年に家具付きの高級メゾンとしてホテルを開業した。彼の死後、未亡人のアンナ・マリア・ザッハーがホテルの総指揮をとり、彼女の手腕の下、ザッハートルテの名声も相まって、ホテルは王侯貴族や外交官が宿泊する世界でも屈指の格式を持つホテルの一つとなっていく。

 ホテルザッハーはウィーン国立オペラ座の真後ろにある“ フィルハーモニカー通り”と、ウィーンの銀座通り“ ケルントナー通り” の交差する角の絶好の立地を誇る。2005年にホテルは大改修を施し、屋上部にモダンなデザインの2フロア分を増築したが、古き良きザッハーを愛好するファンから猛反発を受けた。それだけ目立つ建物であり、市民に愛されたホテルであるが故のエピソードだが、現在はむしろ周りの景観と調和した麗しき外観となっている。

 ホテルザッハーはスイートを含む全149室のゲストルームを擁すが、前述した大改装の際に一部のスイートを除き、多くはコンテンポラリーなデザインを採用したモダンな客室となっている。ホテルのエントランスは小規模だが、館内の華麗な装飾に目を見張る。凛りんとした威厳あるコンシェルジュデスクから奥に進むとホテルの核心部と言える絢けんらん爛豪華なラウンジに導かれる。ホテル創成期の面影を残す気品に満ちた重厚な佇まいである。ラウンジ奥にはロイヤルブルーの色調で統一された「Blue Bar」がありお勧めだ。レストランではオペラ座に面した伝統ウィーン料理の「Restaurant Rote Bar」が人気で、こちらはルージュの官能的な色調で彩られている。メインダイニングはアンナ・ザッハーの名を冠した「Restaurant Anna Sacher」である。渋い木目とグリーンで統一した壁面が醸し出す雰囲気が何ともエレガントだ。そのほか5 階には「Sacher Spa」を用意し、地元のセレブリティーの高い評価を受けている。

 ザッハートルテで絶大な人気を博しているだけに、カフェの「Cafe Sacher Wien」は世界各国からの観光客で溢れている。一料理人が創作した菓子が礎となり、世界屈指の名門ホテルにまで発展した夢物語のようだ。やはり、ザッハートルテあってのホテルザッハーなのか? なにしろホテル開業より50年近く前に菓子は完成していたのだから。

筆者 小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健(株)代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。JHRCA、日本ホテルレストランコンサルタント協会理事。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

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