週刊ホテルレストラン HOTERES WEB

  • TOP
  • ホテル&レストラン
  • 業界コラム
  • ホテルビジネスなんでも相談
  • バイヤーズガイド
  • HITS
  • ホテレス電子版
  1. 世界のリーディングホテル

世界のリーディングホテルVOL50
ザ・ウォルドルフ‐アストリア&タワーズ The Waldorf-Astoria & Towers

週刊ホテルレストラン 2013年6月28日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。これまで多くのホテル紹介本が出版されてきたが、そのほとんどが現地のホテルと事前に取材の連絡を取り合い、プロのカメラマンや通訳、そのほか大勢を連れ立っての大名取材であり、宿泊は省略といったことも多々であった。本連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する。

 ホテル創建当初は、現在のエンパイア・ステートビルディングの場所に建っていたと聞くと驚かれるであろう。当時、この5番街34丁目辺りがニューヨークの中心であり、世界屈指の大富豪アスター一族の広大な屋敷があった場所だ。“ウォルドルフ”とは、このホテルを建設したアスター家の初代J・ジェイコブ・アスターの出身地、ドイツのWalldorf(ヴァルドルフ)に由来する。NY社交界の華であったレディー・アスターと不仲であった甥のW・ウォルドルフ・アスターは、1893年に彼女の屋敷隣に13階建ての「ウォルドルフ・ホテル」を建てた。屋敷は高層ホテルの日陰になってしまい、彼女はアッパー・イーストサイドに転居してしまう。その跡地に息子のJ・ジェイコブ・アスター4世(本誌Vol23、St.Regis参照)が97年に17階建ての「アストリア・ホテル」を建設し、経営をフィラデルフィアの実業家、ジョージ・ボルトに任せる。後にボルトの勧めで、二つのホテルを一体化してNY最大級のホテルが出現する事になった。ここに「ウォルドルフ‐アストリア・ホテル」(以下WAH)が誕生した訳である。

 時は移り、この地に世界最高層のビル建設の話が進み、デュポン家を始めとしたNYの実業家の出資により、1931年にエンパイア・ステートビルディングが完成。一方、WAHは現在のパークアベニューに移転し、同31年に華々しく再オープンした。47階建て1000室を優に超える巨大ホテルで、パークアベニューの49-50丁目の1ブロックを占め、それ故に本館とタワーの住所が違っているくらいだ。建物の随所に当時最先端の美しいアールデコ様式の装飾が取り入られ、エンパイア・ステートビルディングと共にアールデコの宝庫として名高い。壮麗なアールデコのレリーフが飾られたグランドロビー中央に有名な「グレート・クロック」が鎮座している。初代大統領ワシントンなど歴史的人物の肖像が彫られた重厚な置時計でWAHの見所の1つでもある。

 華やかな賑わいの“ホテル”に対して、来訪者のチェックが厳しくやや閉鎖的なのが“タワー”である。WAHの28階から42階までを占め、ホテルとは異なった独自のコンセプトのもとに運営されている。50丁目に面した通りから入るタワーは専用のエントランスが設けられ、VIPの安全とプライバシーを厳格に守っている。それ故、フーバー大統領やマッカーサー元帥など多くの著名人が自邸として使用していた。

 WAHは経済・文化人の香りがする「ザ・プラザ」などに対して、どちらかと言うと国家・政治家の雰囲気が漂うホテルだ。事実、多くの国家元首が利用していて、日本の昭和天皇がお泊りになられたのを始め小泉首相も滞在している。かねてからWAHの買収を夢見ていたヒルトンの創始者、コンラッド・ヒルトンは1949年に念願の経営権を手に入れた。その後、ヒルトン・グループは72年にWAHの買収を完了させ、2005年からヒルトンの最上級ブランドとして「ウォルドルフ・アストリア・コレクション」を新設している。

筆者 小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健(株)代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。JHRCA、日本ホテルレストランコンサルタント協会理事。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

詳細をご覧になりたい方はPDFファイルをダウンロードしてください。

ついに公開!ホテレス電子版 年間8,000円で!過去1年分の記事が読める!キーワードの検索もできる!トライアル版は無料!

世界のリーディングホテル連載一覧

  • 小原康裕