世界のリーディングホテルVOL49
フォーシーズンズホテル ニューヨーク　Four Seasons HotelNew York

週刊ホテルレストラン　2013年6月14日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。これまで多くのホテル紹介本が出版されてきたが、そのほとんどが現地のホテルと事前に取材の連絡を取り合い、プロのカメラマンや通訳、そのほか大勢を連れ立っての大名取材であり、宿泊は省略といったことも多々であった。本連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する。

　5thアベニューでいちばん華やかなティファニー本店とルイヴィトンの間、57丁目をパークアベニューに向かうと、明らかに他とは違う存在感を主張している建物が目に付く。プリツカー賞を受賞した20世紀のアメリカを代表する中国系建築家、I.M.ペイが設計を手掛けたフォーシーズンズホテル・ニューヨーク（以下フォーシーズンズNY）である。ルーブル美術館のガラスのピラミッドを設計した建築家として知られ、フォーシーズンズNYの館内に一歩踏み入ると、彼の力作であるロビーの圧倒的な空間規模に目を奪われる。天井高は33フィートを誇り、端正で凛とした力強い空間フォルムはハイレベルなニューヨークの高級ホテルの中でも屈指の風格を漂わせている。デザイナーには六本木のグランドハイアットやパークハイアット北京も手掛けたレメディオス・シエンベーダ（CSR）を起用し、設計・デザインとも最高の布陣で臨んだ傑作のホテルと言えよう。

　フォーシーズンズNYは1993年に開業し、63室のスイートを含め全368室のゲストルームを擁している。52階建ての新築ホテルなのだが、以前からあるヴィンテージホテルを改修した様な古典的な雰囲気も持ち合わせている。ボサール様式を彷彿させる太い柱が並ぶグランドロビー正面にコンシェルジュデスクを配置し、その右奥に事務系のレセプションを置くレイアウトだ。筆者にアサインされた部屋は「Park View Executive Suite」のスイートで約74m²の面積を持つ。リビングとベッドルームは共にコーナールームとして採光と景観の両立を図り、設計レイアウトの水準が極めて高い事がうかがえる。

　レストラン・バーではジョエル・ロブションの「L'ATELIER de Joel Robuchon」がお勧めだ。オープンキッチンで繰り広げられる調理風景を眺めながら、お馴染みのカウンターでロブションの絶品料理が楽しめる。開業当時はホテルの地番“57丁目57番地”から名付けた「Fifty Seven Fifty Seven」という名称のレストランで、貸し切りのパーティーでよく利用されていた所だ。ユニークな店としては、世界でも類を見ない高級キャビアラウンジ「CalvisiusCaviar Lounge」が58丁目側エントランスに出店している。そのほかグランドロビー側にアカシアの森をイメージした「The Garden」と、優雅な暖炉で寛げる「TY Lounge」が人気だ。スパ「The SPA」はエレベーターを乗り換えた地階にあり、ゲストのあらゆる要望に応えている。また、フィットネスエリアの利用はルームキーで24時間アクセスが可能である。

　ニューヨークのいわゆる“超高級”と評価されるホテルは、歴史や物語を感じさせる重厚な佇まいのホテルが大部分である。その中で、フォーシーズンズNYは上品でスタイリッシュな雰囲気が心地よい。ホテルの歴史観にこだわらねば立地を含めてニューヨークでのお勧めホテルと言えよう。

筆者　小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健（株）代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。JHRCA、日本ホテルレストランコンサルタント協会理事。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

詳細をご覧になりたい方はPDFファイルをダウンロードしてください。