世界のリーディングホテルVOL35
ローズウッドマンション オン タートル クリーク Rosewood Mansionon Turtle Creek

週刊ホテルレストラン　2012年11月9日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。これまで多くのホテル紹介本が出版されてきたが、そのほとんどが現地のホテルと事前に取材の連絡を取り合い、プロのカメラマンや通訳、そのほか大勢を連れ立っての大名取材であり、宿泊は省略といったことも多々であった。本連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する。

　テキサス州ダラスの名門ホテルである。否、全米でも屈指の評価を誇る老舗名門ホテルだ。「Rosewood Hotels & Resorts」のフラッグシップ・ホテルであり、“The Mansion”の名称でその名は世界中のホテリエに広く認知されている。「InstitutionalInvestor」誌のトップ10の常連組でもあり、去年2011年のランキングでは見事、世界ナンバーワンの栄誉に輝いている。ローズウッド・ホテルグループはダラスに本拠地を置く高級ホテルチェーンで、ニューヨークの「The Carlyle」など個性ある高級ホテルが名を連ね、つい最近まで「ホテル西洋銀座」もグループメンバーであった。

　テキサスの石油王、H・L・ハントの娘であるキャロライン・ハントが、この地の綿花王であったシェパード・キングの大豪邸を買い取り、ラグジュアリーな“邸宅ホテル”に改修して1979年にオープンしたのが“The Mansion”の始まりである。東京で言えば田園調布といったダラスの高級住宅地にホテルは佇み、Creekの名の通り清々しい小川が渓谷沿いに木立の間を流れるこれ以上は望めない程の絶妙な立地である。タートル・クリークの清流から緩やかな坂を上がって行くと、左手にローズピンクの門柱脇にマンション名を記したエントランスが見えて来る。車寄せ正面には円屋根の美しいドーム状の正面玄関があり、ホテルの顔とも言うべき丸十字の“採光窓”が優雅な存在感を漂わせている。

　ホテルは16室のスイートを含む全143室のゲストルームを有し、レセプションのあるホテル側の正面玄関と、プロムナード・コリドーを挟んでレストラン側玄関に分かれている。レストラン棟は1920年代当時のキング氏の邸宅がそのまま使用され、2階までの吹き抜けのエレガントな玄関ホワイエに立つと、まさに邸宅に招かれた感覚になる。正面にあるゴージャスなメインダイニング「T h eMansion Restaurant」のベランダ側席を抜けると、暖炉のあるテラス「Restaurant Terrace」に出られる。そのほか落ち着いたバー「The Mansion Bar」や目の覚めるような個室感覚の「Chef's Table」、地下にある年代物のワインに囲まれた特等席テーブルの「The Wine Cellar」など多彩なレイアウトを誇っている。スパ・フィットネスの「The Health & Fitness Studio」には豪華なトリートメントルームが並び、ジムには最新のマシンが装備されている。外に出ると南欧風の屋外プールが大型のデッキチェアを周囲に配置して静かに佇んでいる。

　“The Mansion”は近隣の富裕層をはじめダラスの上流階級の多くを顧客に持ち、ウエディングや各種パーティーにも力を入れている。華麗なボールルーム「The Promenade」をはじめ多くのパーティー用のパヴィリオンを用意して、ダラスで最もエレガントなウエディングスポットとして評価されている。このように地元に根付いたホテルブランドとダラスのセレブリティ－層がホテルの重要なアンビアンスを支えていると言えよう。

筆者　小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健（株）代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。JHRCA、日本ホテルレストランコンサルタント協会理事。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

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