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  1. 世界のリーディングホテル

世界のリーディングホテルVOL32 ザ・バークレー The Berkeley

週刊ホテルレストラン 2012年9月28日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。これまで多くのホテル紹介本が出版されてきたが、そのほとんどが現地のホテルと事前に取材の連絡を取り合い、プロのカメラマンや通訳、そのほか大勢を連れ立っての大名取材であり、宿泊は省略といったことも多々であった。本連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する。

 ロンドン、ナイツブリッジの閑静な住宅街ウィルトンプレイスに、ザ・バークレーの瀟洒な建物は周囲の木立に溶け込み佇んでいる。築100年以上の建物が当たり前のロンドンでバークレーの建物は比較的新しく1972年にこの地にオープした。もちろんホテル自体の歴史は19世紀まで遡り、当初はピカデリー近くのバークレー通りにイギリスを代表する建築家、エドウィン・ラッチェンスの設計で開業している。

 気品あるホテルとして開業以来高い評価を受け、社交界デビューする年ごろの良家の子女が、エスコートなしに訪れることができる数少ないレストランだったといわれる。その卓越したホスピタリティーは徐々にロンドン上流階級に広まり、その評判はサヴォイを立ち上げたリチャード・ドイリー・カートにも届くことになる。野心に燃えるカートは激しい買収工作を繰り広げ、1901年にサヴォイグループの傘下に収めた。現在、バークレーはクラリッジズ、コノートと共に“メイボーン・ホテルグループ”「Maybourne Hotel Group」の一員となっている。(本誌Vol 28、The Savoy参照)

 バークレー通り時代のホテルの面影は有名な「The Blue Bar」に見ることができる。著名なデザイナーのデビット・コリンズによって繊細な彫刻が施されたウッドパネルは、ブルー一色に塗り替えられた。ラッチェンスが設計したオリジナルの装飾をそのまま生かして、店内を基本のブルーに彩色し、新しいバー「The Blue Bar」として再生した。今ではマドンナやレオナルド・ディカプリオなどの著名スターの“たまり場”として有名になり、流行に敏感なロンドンっ子たちにも最もホットなバーとして人気が高い。エントランス右手にはファッショナブルなアフタヌーンティーで評判の「The Caramel Room」がある。“プレタポルテ”「Pret-a-Porter」をもじった“プレタポルティー”「Pret-a-Portea」と銘打った人気メニューだ。有名ファッションデザイナーの作品を色彩豊かなお菓子に表現したもので、それぞれ春夏・秋冬コレクションに分かれている。ちなみに2012年の春夏はドルチェ&ガッパーナやバレンチノの作品を表現した、まるでスイーツの宝石箱だ。さらに主役のティーはポール・スミスのスタイリッシュなボーン・チャイナで提供されて、満足度は非常に高くぜひ試していただきたい。

 バークレーで忘れてはならないもう一つの施設は、豪華なルーフトップのスイミングプールであろう。ロンドンの老舗ホテルでは非常にめずらしい屋上にある全天候型のプールで、季節によって屋根が開閉できる。プールと連結してルーフトップ・コートヤードが設けてあり、草花の緑が美しい空間に用意されたデッキチェアでくつろげる。そのほか評価の高かったメインダイニング「Petrus」の系譜を持つミシュラン2ツ星レストラン、「Marcus Wareing atthe Berkeley」もあり食通の間で人気を博している。

 バークレーは100年以上の歴史を持ちながら常に自己変革にチャレンジして来たホテルだ。ナイツブリッジに居を移して40年、その魅力は色褪せることはなく今も光り輝いている。

筆者 小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健(株)代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。JHRCA、日本ホテルレストランコンサルタント協会理事。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

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