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  1. 大成建設 山内隆司の 世界の風に吹かれて

大成建設 山内隆司の 世界の風に吹かれて(最終回)
地震に負けない国づくりを目指して

週刊ホテルレストラン 2012年2月24日号掲載

山内社長の連載がいよいよ最終回を迎える。未曾有の被害をもたらした東日本大震災から1年。地震に強い国づくりの必要性が叫ばれる中で、大成建設が取り組む地震対策技術の最前線についてお話を伺った。

 未曾有の大災害となった東日本大震災から1年を迎えようとしています。当社は、地震発生直後から緊急支援物資とともに技術者などの応援スタッフを被災地に派遣し、現地の情報収集やお客さまの事業継続へ向けたお手伝い、当社が施工した建物の安全確認などを行いました。そして現在も被災地域の復興に向け全社を挙げて取り組んでいるところです。今回の地震では改めて安心・安全な建物づくりの必要性を痛感させられました。

 さて、皆さんは、建物の地震対策には大きく分けて「耐震」「制震」「免震」の3つの技術があることをご存じでしょうか。

 「耐震」は建物の柱や梁といった構造体そのものを強くすることによって、強い地震力を受けても建物が壊れないようにする方法です。しかし、強い地震の揺れによって小規模な損傷の恐れもあるため、被害を最小限に抑えてお客さまの事業継続を図るために、その後さまざまな地震対策技術が開発されてきました。「制震」は、建物の適所にさまざまな装置を配置することによって地震力を軽減させる技術です。当社が施工した宮城県にある仙台トラストタワーでは、制震間柱、制震ブレース(筋交い)、粘性制震壁の三つの装置が、地震の揺れを吸収し柱や梁へのダメージを防ぎました。震災後の調査では、「制震柱」にごく軽微な変形が認められ、制震機能が働いたことが確認されました。

 この建物にあるウェスティンホテル仙台は、2010年8月の開業後わずか1年足らずで大震災を経験されました。震災時に建物の中におられた方の話では、被害がほとんどなかったと伺いました。震災後はロビーを一時避難場所として開放し、4日間にわたり帰宅が困難となった方々に客室や食事などを提供されたそうです。

 「制震」が地震の揺れを抑えるのに対して、地震の揺れを建物に伝えないようにするのが「免震」です。建物と地盤の間に特殊な装置による免震層を作り、建物への地震の衝撃を和らげる構造になっています。平成11年に誕生した、仙台MTビルは、当社が施工した日本で初めての高層免震建物です。1階の床下部分に、弾性すべり支承と積層ゴム支承の2種類の装置を組み合わせたシステムを採用しました。この度の震災でも、高い免震効果が発揮され地震の強さを表す加速度が地面の揺れに比べて三分の二以下程度まで低減したことが確認されました。この免震構造は、超高層マンションを中心に適用が進んでいます。近年では、地震時の災害拠点となる病院や診療所などにも免震構造を採用する建物が増えています。当社が免震構造で施工した福島県内の病院では、地震ですさまじい揺れが生じたにもかかわらず、全く無傷で対局中だった碁盤の上の碁石が地震前とまったく同じ場所にあったと伺っています。

 私たち建設会社もホテルやレストランの仕事に携わっておられる皆さまと同じように、地震などの災害時にお客さまの人命を守り安全な場所を提供するという重責を担っています。今号で私の連載も最終回となりますが、当社グループの「人がいきいきとする環境を創造する」という理念の下、これからも地震や津波にも負けない建物や社会基盤づくりを通して、災害に強い国づくりのために尽力していきたいと考えています。

山内隆司(やまうち・たかし)氏プロフィール
1946年6月12日、岡山県・邑久町(現瀬戸内市)に生まれる。府立天王寺高、東京大学工学部建築学科を経て、69年6月大成建設(株)入社。建築畑を歩き、ヒルトン東京ホテル、そごう川口店、センシティタワーなどを手掛ける。99年6月執行役員関東支店長、2002年4月常務役員建築本部長、05年6月取締役専務役員建築本部長、06年4月取締役専務役員社長室長などを経て、07年4月代表取締役社長、現在に至る。

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