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  1. 世界のリーディングホテル

世界のリーディングホテルVOL15 フォーシーズンズリゾート チェンマイ

週刊ホテルレストラン 2012年1月13日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。
これまで多くのホテル紹介本が出版されてきたが、そのほとんどが現地のホテルと事前に取材の連絡を取り合い、プロのカメラマンや通訳、そのほか大勢を連れ立っての大名取材であり、宿泊は省略といったことも多々であった。本連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する。

 日本人にとって日常の見慣れた風景である“田んぼ”が、高級ホテルのメインガーデンに“主役”として登場したと聞いて軽い衝撃を受けたことがある。1995年に開業したフォーシーズンズリゾート、チェンマイ(旧リージェント、チェンマイ)である。それはリゾートホテルにおけるガーデンレイアウトの多様性と、同時に次世代へのリゾートの方向性を示した画期的な出来事でもあった。

 タイ北部に位置する古都チェンマイは、13世紀後半にチェンライから遷都されたランナータイ王朝の首都として栄え、「北方のバラ」と呼ばれる美しい町である。フォーシーズンズリゾート、チェンマイは市内から北へ車で20分のメーリム渓谷に位置する。広大な敷地には美しい稲作の棚田“ライステラス”が広がり、北部タイの伝統的なランナー建築様式の独立したパビリオンが点在している。山岳地帯に広がるリゾートは、敷地内で一つの世界観が完結するよう巧みなレイアウトになっている。レセプションのあるメイン棟テラスから眺めると、この独自の世界観の全容が見渡せる。周りの山並みが借景となって盆地のように庭園を囲み、中央に棚田の水田を配してメインキャンバスとし、眼下に階段状の2つのプールと正面奥には古い米納屋をイメージしたヨガと瞑想の施設を配置している。日本でかつて見られた田舎の原風景と重なり合い、無意識に癒やされ安堵する風景である。

 ゲストルームの基本は4つの客室から成る2階建てのパビリオンで、それぞれ左右にUpperとLowerのパビリオンに分れている。64戸あるパビリオン客室の内、ここでは「Upper RiceTerrace Pavilion」をお勧めしたい。「Sala」と呼ばれるタイ式屋外ベランダから、眼下に広がる美しい棚田の水田風景を樹木で遮られることなく望むことができる。客室としてはそのほか12戸のプール付きヴィラ、22戸のプライベートレジデンスを含む全98戸のゲストルームを擁している。

 レストランは2つあり、タイ郷土料理の「SalaMae Rim」と西洋料理の「Terrace」がある。スイミングプールはジャグジーを備えたメインプールと、その下に大人専用の小プールが棚田に囲まれてひっそりと配置されている。プライベートレジデンス側を散策すると木橋の回廊の向こうに戸建てのスパ施設が見えてくる。雰囲気のあるアプローチを進んで行くと7室あるトリートメントスイートを有する豪華なロビーに迎えられる。そのほかヘルスクラブや5つのブティックが集まった「Lan Sai Village」など充実した施設を備えている。

 棚田ではゲストも参加できる“田植え”の実演も行なわれている。何か違和感を持ちながら案山子(かかし)の見守る稲作田の風景を見ていると、誰しも希求する“癒やし”をテーマとした新しいリゾートの在り方に考えさせられた。

筆者 小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健(株)代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

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