世界のリーディングホテルVOL7
ザ・リッツカールトン　ロサンゼルス　AT L.A. LIVE

週刊ホテルレストラン　2011年9月9日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。
これまで多くのホテル紹介本が出版されてきたが、そのほとんどが現地のホテルと事前に取材の連絡を取り合い、プロのカメラマンや通訳、そのほか大勢を連れ立っての大名取材であり、宿泊は省略といったことも多々であった。本連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する。

　これまで荒廃していたロサンゼルスの中心部をよみがえさせる画期的な施設が誕生した。L.A. Liveという名称の巨大エンターテインメント・コンプレックスだ。ロサンゼルス・コンベンション・センターとステイプルズ・センター（バスケットボールのLAレイカーズやアイスホッケーのLAキングスの本拠地）に隣接した好立地に、ノキア・シアター、グラミー・ミュージアム、ESPNゾーン、14スクリーンの映画館、12のレストラン、そして最後にリッツ・カールトンとJWマリオットのホテル開業をもってこの巨大複合施設は完成した。

　疲弊していたダウンタウンはこれにより見事に復活を果たし、問題であった治安も徐々に改善してきた。クルマ社会の典型だった街も地下鉄網が一応完成し、大動脈のウィルシャーBlvdには最新鋭の2両連結バスが運行を始めた。一昔前であれば一人歩きなど考えられなかったダウンタウンも小ぎれいになり、今回は筆者もゆっくり中心部の散歩を楽しんで来た。夜間の一人歩きはまだ危険だが、昔のダウンタウンを知る者にとって画期的な大変革と言える。詳しくは筆者ホームページEdition7のロサンゼルス特集を参照されたい。

　そんなロサンゼルスで一番ホットな場所に、2010年4月にザ・リッツ・カールトンL.A. Live（以下RC/LA）がオープンした訳である。54階建てタワーの22-26階部分に15のスイートを含む全123室を擁するホテルだ。27階以上の上層階は「The Ritz-Carlton Residences at L.A.Live」の超高級レジデンスである。RC/LAのコンセプトは、客室数を抑えたブティックホテルの感性と5ツ星ホテルのホスピタリティーである。今までのクラシカルで重厚な雰囲気とは対極の、コンテンポラリー感覚あふれるクールでヒップなインテリアになっている。リッツ・カールトンは1998年以来マリオット・インターナショナルの傘下にあるが、2002年にCEOのホルスト・シュルツ氏が退任した後に、このようなJWマリオットとのコラボレーションの傾向が多く見られるようになった。

　RC/LAにはアカデミー賞公式シェフのウルフギャング・パック氏がプロデュースするレストラン＆バー「WP24」がありお勧めだ。そのほか趣向を変えた5つのレストラン＆バーもあるのだが、こちらはJWマリオット側にあり共有施設という形を取っている。また750㎡の広さを誇るモダンな「The Ritz-Carlton Spa」、ルーフトップ・スイミングプール、フィットネスセンターなど施設は充実している。特にクラブラウンジのゆったりとしたレイアウトとホスピタリティーは注目に値する。スタッフは非常にフレンドリーで、一人一人に可能な限りゲストの名前で声を掛け、要望を聞いて回り、一人旅のゲストとは雑談にまで応じる姿は新鮮に映った。

　おそらくブティックホテルのコンセプトを標榜した初めてのリッツ・カールトンと思われるが、この新しい試みが今後どう展開して行くのか大いに楽しみである。

筆者　小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健（株）代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

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