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  1. 世界のリーディングホテル

世界のリーディングホテルVOL6 バンヤンツリー杭州

週刊ホテルレストラン 2011年8月26日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。
これまで多くのホテル紹介本が出版されてきたが、そのほとんどが現地のホテルと事前に取材の連絡を取り合い、プロのカメラマンや通訳、そのほか大勢を連れ立っての大名取材であり、宿泊は省略といったことも多々であった。本連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する。

 実に優雅で気品に満ちたホテルだ。“The Empress”、名前の響きがまた良いではないか。日本の天皇皇后両陛下も2009年7月にカナダ公式訪問の際、このエンプレスに立ち寄られている。ご宿泊はビクトリアの副総督邸であったため、「The Empress Tea Room」においてアフタヌーンティーを召し上がられたと聞く。

 カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州の州都はバンクーバーではなく、ここビクトリアである。ガーデンシティーと呼ばれる美しい街で、カナダで一番英国に近い雰囲気を持つ都市といわれる。1849年にバンクーバー島がイギリスの植民地になってからは首都となり、時の英国女王にちなんでビクトリアと命名された。ブリティッシュ・コロンビア州は、政治のビクトリアと、経済のバンクーバーとが兄弟都市として役割分担がうまく機能している。したがって2都市間の交通網は非常に発達しており、通常の航空機のほか、水上飛行機、船、バスごとフェリーに乗り込む定期バスなど多彩だ。一番便利なのは水上飛行機で、エンプレスの庭先にあるインナーハーバーに着水するので、すぐ目の前がホテルということになる。詳しくは筆者ホームページの「Edition 8」を参照されたい。

 フェアモント・エンプレスはCPカナディアン・パシフィック・ホテルズ社によって1908年に開業した。その後の変遷を経てカナディアン・パシフィック・ホテル&リゾーツ社は、99年にフェアモント・ホテルズを買収し傘下に置くことになる。しかし今後の世界的ホテル展開を見越して、買収された側の「フェアモント」の名称は残すことにした。それが現在のザ・フェアモント・エンプレスの名称に至るヒストリーである。また、近くに建つ堂々とした州議事堂は1898年に建築家フランシス・ラッテンベリーによって建設されたが、実はエンプレスも彼の設計により建てられたものである。

 フェアモント・エンプレスはスイートを含む全477の客室を擁し、メインダイニングの「TheEmpress Room」、インド・コロニアルスタイルの「Bengal Lounge」、アフタヌーンティーで有名な「The Empress Tea Room」等のレストランを有している。つい最近2009年には数百万ドルをかけて改修を行ない、特にゴールドフロアやスパ、ミーティングルームなどを充実させている。

 ビクトリア観光のハイライトの一つにエンプレスでのアフタヌーンティーが挙げられるように、このホテルとビクトリアの街は一体化した関係にある。1965年に老巧化を理由にホテル取り壊しの計画が発表されると、市民はティーカップを持って対抗し、遂には計画を白紙に戻してホテルを救ったという。ホテルスタッフの純朴とも言えるホスピタリティー意識は心地よく、同時に市民からこよなく愛され、大きな誇りを抱かれているエンプレスは、世界で一番幸せなホテルと言えるかも知れない。

筆者 小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健(株)代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

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