あの人に聞きたい
質問
デフレ、人権費削減、リストラ…
この大変苦しい状況下で、マネジメントとして、どのようにスタッフを
モチベートしていけば良いのでしょうか?
田中勝氏 回答
ご質問された方の気持ちが実感として、痛いほど分かるような気がします。
ご質問に対する正解とは、状況により異なりますので、一概に言えませんが、以下私の考えを述べますので、ご参考になれば幸いです。
まず、頂いたご質問に答える前に、下記の質問に答えて頂けますか?
- 「最近の1週間で10回以上、部下の方々を褒めたことが、ありますか?」
- 「最近1週間で5回以上、自分の部下の方々からお礼を言われたことがありますか?」
以上の質問に「イエス」と答えられなかった方にとっては、この厳しい状況下で部下のモチベーションを維持・向上させることは、難しいチャレンジになると思います。
私が言いたいことは、「何事も日頃が大切であり、モチベーションは部下との信頼関係の上に、個人個人が築き上げるものであり、リーダーはそのサポートを仕組みとして作ることである」ということです。
では、日頃何をすべきでしょうか?要は部下の努力を認識することです。簡単な行動例を幾つか挙げますので、ご自身で考えて実行されてください。
- 1)廊下ですれ違ったら、自分から相手の名前を呼んで挨拶していますか?
- 2)部下を部下と考えず、部下を一個人として捉え、部下に個人的興味を抱いていますか?例えばお誕生日には"おめでとう"と言えていますか?女性スタッフの髪型が変わったら気が付いていますか?またそれを口に出していますか?
- 3)部下の努力の内容が総て貴方に報告されていますか?その努力に対して認識を表現していますか?御礼状を書くとか、お礼に職場を訪れるとか。
こうした、ささやかな日常行動により、部下との信頼感が生まれ、苦境に立った時でも、一緒に頑張ろうという気持に自然となるのではないでしょうか?
普段冷たくしておいて、急に"愛しています"と告白したケースと同じです。
多くの部下は、会社を辞めるのではなく、上司から去るのです。日頃の信頼関係なしには、何も成り立ちません。
こうした人間本来が持つ情感的な事だけでは勿論、事は解決しません。次は仕組みを作ることです。これがリーダーとして一番の責任です。では仕組みとは、何でしょうか? また幾つか例を挙げてみます。
- (1)ホテルの損益計算書・部門別損益計算書等々の数字情報を公開することです。モチベーションとは、何かの目的に向かって、その目的を達成しようとする意欲です。目的が不明確なのに、どうしてモチベーションを挙げられるのですか?
- (2)更に、目標を細分化し、達成した個人・チームを認識してあげるシステムを作ることです。例えば、レストランのウエイターまたフロントクラークは毎日何の目標を持って会社に来ているのですか?大いなる疑問です。しかし、レストランの売り上げ目標を個人個人の目標として細分化したら、ウエイターの方は、毎日明確な目標を持って働けるのではないでしょうか?そして、個人なりチームの努力結果を数値化し、達成者を認識してあげるべきです。
- (3)アップ・セリング、クロス・セリングはご存じかと思います。これは売上を上げる為の手段であると同時に、個人個人の努力目標を数値化し、目標に向かってモチベーションを挙げる為手段という人間的側面もあることを理解すべきです。
- (4)また「小さな勝利」を見つけ、皆でお祝いをすることです。「小さな勝利」とは、何でしょうか? どんなに厳しい環境下でも探せば必ず新記録がどこかに隠されているはずです。例えば、4月3日のレブパが史上最高とか、3月のアップセリングで、田中君が初めて1位になったとか、探す気になれば、経費部分の含め必ず何か見つかります。その新記録を小さくお祝いするのではなく、ホテル皆でお祝いするのです。
- (5)最後に「プロジェクト」を横割りに形成し、若手チームでプロジェクトを実行し、その成果の良いものを、ホテル運営に取り入れることです。今の環境下で言えば、「ホテル運営から何が破棄できるか?」というプロジェクトを色々なセクションの人でチームを作り、討議・提案させることは面白いと思います。要は現在ある慣行の中で不要なものは何か?を討議し、提案させるのです。結果、提案内容も勿論重要ですが、それと同等に横断的にプロジェクトチームを作ることにより、同じ目標に向かって、一緒に行動することにより、自然と連帯感が生まれてくるのです。
結論は
- (1)モチベーションは個人の問題である
- (2)リーダーは仕組みを作り、個人をサポートすることが仕事である
- (3)仕組みは情報公開、情報の細分化により、個人に関連付けたものであるべき
- (4)目標は数値化され、達成に対しては、認識すべきである
- (5)「小さな勝利」を探せ、そしてお祝いをせよ
- (6)クロス・セクションでプロジェクトを創設せよ
- (7)要は、"やるか、やらないか"である。考える前に実行せよ
ホテル業界の更なる発展の為に、皆さん冷静且つ情熱的に頑張ってください。
- プロフィール
- 田中 勝(たなか まさる)
- 国内外でのホテルマネジメント経験を通じてグローバル・ホテル・マネジメントの手法を学ぶとともに、迎賓館支配人時代には数多くの国賓を迎える中でサービスの真髄を学ぶ。それらを生かして、東京・横浜のインターコンチネンタルホテルでは輝かしい実績を残し、インターナショナルな経営センスと独自の人柄により、ホテルスタッフからは「伝説的カリスマ総支配人」と呼ばれるなど、数々の伝説を持つ。現在はホテル産業経営塾塾長を務める傍ら、大学でも教鞭を取り、また、コンサルティングや講演で数々の実績を持つなど幅広く活躍している。
株式会社 MT J-ホスピタリティ 代表取締役 http://www.mt-jh.co.jp/
飯島幸親氏 回答
現状の経済環境下で如何に各自のモチベーションを持ち続けるかのご質問ですが、念頭に入れるべきことは、グローバリゼーションの流れはこれからも多種の環境変化をもたらすという事実です。
日本の従来からある企業と社員の関係、しいては社会構造も変わってくる時期に来ていると思います。
一企業が社員の雇用に生涯責任を持つ事など不可能、同時に社員側も会社に一生を託すのではなく仕事のエキスパートとし所属する、双方の価値観のバランスで成り立つ雇用関係です。
それはさておき、現状では何をしたら良いかを提案してみます。
企業・経営者への提案
- ・日本特有の利益を無視した過剰な顧客優先主義にこだわらないこと。(お客様が決して神様ではない現実を認識する事)
- ・ただし、ホテルの品質、サービスに明確な規格をしてそれをギャランティする。(欧米のようなホテルの格付けが)
- ・原点の当然しなくてはならない当たり前のことをしっかりと確認して当たり前にお届けする事。
- ・明確なジョブデイスクリプション(役割分担)を作成して実務に取り入れ、仕事の効率や公平な評価制度につなげる。
- ・生産性や効率を主体にオペレーションを行う。数値目標として社員一人の生産性を図る(社員一人の売上高と客数など)
- ・適正なマンニングの実施によって効果のない人件費の抑制、さらにサービス、品質の向上を図る。
- ・トランスファー(配置換え)とクロストレーニングを大いに実施する。
- ・会社が率先して社員のセカンドジョブを認める事。(日本も一つの仕事で生活を保つ事は困難な時代に突入してます)
- ・全部門でのインセンテイブの導入
- ・語学学校、適切な専門知識の講座等の終了者には会社が何らかの資金負担をする。
- ・仕事を楽しくするためにも過度な上下関係やしがらみ的風習は止め、一人間としてのライフ・ワークバランスをもっと重視。
- ・最後に、無駄な会議時間を出来るだけ排除して現場に赴く事。
個人への提案
- ・人材育成を意識して自分が出来るだけではなく、各々のレベルでのトレーナのエキスパートになる教えるスキルを身につける。
- ・今まで以上に”自分の身は自分で守る”自立の精神と独立独歩の意識が必要。
- ・海外のマーケットや、自らの仕事で挑戦できる良い時代です(意外と退社して他の世界に挑戦してみるのもチャンスかもしれません)。
- ・たった一回の人生、自信を持ってやりたいことをやって見るのも、多少のリスクは有りますが信念さえ持ち続けていれば何とかなります。
- プロフィール
- 飯島幸親(いいじま ゆきちか)
- 1942年東京生まれ。成城大学経済学部卒業後、帝国ホテル、札幌グランドホテルなどで料理人としてのキャリアをスタート。
センチュリープラザホテル、ベルエア・カントリークラブなどを経て、シアトルマリオットホテル、サンディエゴ・マリオットホテル&マリーナで総料理長を歴任(サンディエゴ・マリオットホテル総料理長時代はウエストコーストの38ホテルのリージョナル・エグゼクテイブシェフ)。
マリオット・コーポレート・シェフ・グループ・アドバイザリー・ボードメンバー。マリオット・インターナショナル・インコーポレーテッド日本・韓国担当リージョナル・マーケット・オペレーション部長、岐阜および札幌のルネッサンスホテルで総支配人代行、JWマリオットホテル・バンコク、ワイキキ・ビーチ・マリオットホテルのオペレーションディレクターなどを歴任。
2006年横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズに着任しホテル運営のグローバル化と社員を大切にする会社作りに貢献。結果として健全な利益体制基盤の確立(1年目の5億円目標を達成)現在は日本とサンディエゴを行き来しながらこれからの世界でグローバルに活躍できるホテリエを育成するために精力的に活動している。

