週刊ホテルレストラン HOTERES WEB

  • TOP
  • ホテル&レストラン
  • 業界コラム
  • ホテルビジネスなんでも相談
  • バイヤーズガイド
  • HITS
  • ホテレス電子版
  1. 「私が働いたアメリカのホテル」奥谷啓介

「私が働いたアメリカのホテル」奥谷啓介

2012.03.05

第三十九回 ホスピタリティーとおもてなし

「日本のおもてなし文化は世界に誇れるもの」と昔から言われてきた。そして、私は、プラザホテルで働いている時代に、「アメリカのホテルのサービスはひどい」とよく言われたものだった。しかし、近頃、「アメリカのサービスのほうが日本よりいい」という声を日本人から聞くようになった。なにが変わったのか。

現在、アメリカで最も大きな問題は“肥満”の感染と言われている。成人人口の3割が肥満で、10年後にはその割合は6割となり、アメリカ人の平均寿命を著しく下げるという警告がでている。オバマ夫人が”Let’s Move”という運動を展開し、学校を回って給食を点検し、栄養のある低カロリー食品を出す規制を作っている。ニューヨークでは、“バリアトリックカウンセラー”という肥満と糖尿病の予防&治療のカウンセラーを育成するための学課が大学で設けられた。こうした流れで、レストランでも、健康に良いメニューのアドバイスを行う、“バリアトリックオリエンテッドサービス”を流行らせたいというプロジェクトがあがり、私も導入活動をしている。

肉は主食として外せないものだが、その脂肪はコレステロール値を上げて脳梗塞や心臓病につながる。また、大腸内で吸収される脂肪は発がん性物質となる。これらを防ぐためには、ポリフェノールの入った赤ワインを飲み、脂肪の吸収を防ぐ植物繊維を一緒に取ることが好ましい。こうした知識をウエイター&ウエイトレスに持たせて、ゲストの健康を守るために、食べ物の組み合わせをアドバイスしようというのが“バリアトリックオリエンテッドサービス”だ。その知識は、日常生活で使えるものだから、「直接お会いしないときでも、私たちはお客様のお役にたっていたい。その気持ちから生まれたのがバリアトリックオリエンテッドサービスです」というフレーズが生まれた。

アメリカ人に提案すると、「すぐに取り入れたい」と胸を弾ませる。だが、日本人に言うと、「それが、本当にお客様がレストランに望んでいることだろうか?」という声もあがる。アメリカのホスピタリティーは、相手が求めていることを先読みする、いわゆる“気のきいたサービス”ではない。だが、弱者を守ったり健康に良かったりすることなど、世間が称賛することは率先して取り入れる。一方、日本では、ゲストに楽しい思いをしていただくことに重点を置くのが“おもてなし”の基本だから、たとえ健康に良いことであっても、それに優先順位を置かないことになる。

だが、日本でも大きな視野で世の中を見る人々が増えてきている。そういう人の多くは、“良いことは取り入れるのが当たり前”という考え方をする。その価値観はグローバル意識の浸透とともに広がっていく。時代の流れとともに、おもてなしの考え方も変えていかないと、「アメリカのサービスのほうが日本よりいい」という声を増やしてしまうことになりかねないと私は危惧している。

奥谷啓介オフィシャルサイト http://okutanikeisuke.com/

ついに公開!ホテレス電子版 年間8,000円で!過去1年分の記事が読める!キーワードの検索もできる!トライアル版は無料!

奥谷啓介 連載バックナンバー