「私が働いたアメリカのホテル」奥谷啓介
2010.08.18
第二十四回 愛社精神を強めるクリスマスパーティー
11月下旬のサンクスギビングあたりから、アメリカはホリデーシーズンに入る。電話での枕詞は「ハッピー・ホリデー」。電話を受けた交換手が挨拶として最初に言う言葉だ。アメリカ中の人々がたるんだ状態になる時期だが、ニューヨークのホテルは一年で一番のピーク時で大騒ぎとなる。
クリスマスに、家族や知り合いに贈り物をする彼らの習慣を日本人に理解してもらうのはむずかしい。子供から大人まで、親しき人には必ず贈り物をする。その贈り物を買うために、地方からニューヨークへと人々が出て来て、街中が満員電車のようになる。通常、300ドル程度の部屋が900ドル以上にもなる時期。また、クリスマスのこの時期の売り上げが年間総売り上げの半分にも達するデパートもあるくらいで、それはそれは、すさまじいものなのだ。だから、「クリスマス商戦」と呼ばれ、この時期の売り上げがアメリカの景気のバロメーターとなる。
オフィスで働く仲間は、もちろん“とっても親しい人々”だから、お互いにプレゼントの交換を行う。みんな、オフィスの人のためだけに、20数個も買わなくてはならなくなる。私が働いた営業部では、プレゼント交換の場を外のレストランで用意して、飲食代は上司のエキスペンスから支払われた。もうひとつ、ホテルの愛社精神を高める場として、グランドボールルームを利用して、社内パーティーが開かれる。そのときのゲストはマネージャー以外のスタッフ。マネージャーはバーテンダーやフードサーバーになったりして、彼らをもてなす。
料理内容も素晴らしい。宴会でこれだけのものを用意したら、食事代だけで200ドルはする豪華なものが用意される。ドリンクを合わせて税金チップを入れれば、一人あたま300ドル近くにもなる。スタッフは家族を一人まで招待することが許される。プラザのスタッフは900人だから、2倍になれば1800人。300ドルX1800人で54万ドル。もちろん、コストで考えればそんなにはしないが、とにかく膨大な経費をかける年一回の大イベントに違いない。
スタッフは値段を知っているから、こうしたイベントで安い食事を出すことはできない。そんなことをしようものなら、「会社はケチ」という印象を与えることになる。これは「こんな素晴らしい会社で働いている私は幸せである」と思わせる場なのだ。
アメリカ人は日本人のように、我慢をしてまで働かない。彼らにいい仕事をしてもらうには、こうした場がとても重要なものとなる。「こんなにいい会社で働けて自分は幸せ」そう思わせる運営が必要とされるのだ。



