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  1. 世代間の価値観や考え方のGAPについて

世代間の価値観や考え方のGAPについて ~バイアスを外してコミュニケーションを~

2010.03.03

1月28日に弊社で実施した「世代間の価値観・考え方の差に関するアンケート調査」の結果に対して、株式会社コーチAの山本氏にチームマネジメントや組織パフォーマンス向上のプロフェッショナルの視点からアドバイスをいただきました。

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普段から、部下のパフォーマンス向上、組織内のコミュニケーション活性化、企業風土改革などの課題について、企業の人事部や経営企画部の方とお話することが多いため、このアンケートも非常に興味深く拝見しました。特に、世代による考え方、価値観のGAPが「大きなストレスやモチベーション低下の原因となった」経験者が75%を超えているという事実は見逃せません。なぜならば、ストレスやモチベーション低下は、組織パフォーマンス、業績への影響が非常に大きいからです。

私達コーチは、ビジネスパーソンや企業組織をコーチする中で、クライアントに何かしらの行動変容を起こしたい時、必ずクライアントの【価値観】に触れます。多くの場合、人の行動は意識的にも無意識的にも自分の【価値観】に基づいて行動しているからです。ですから、まずは、「自分がどのような価値観を持っているのか」を共に検証していきます。また、「部下や上司、共に働く仲間はどんな価値観を持っているのか」についてもリサーチや、インタビューなどによって明らかにしていきます。この時、明らかになってきた価値観のGAPをどう受け止め、対処していくかが非常に大切です。

育ってきた時代、環境、教育が異なれば価値観が異なるのも当然。ですから、今回のアンケートの「上司はいかにも日本的な古い考え方だ」「言葉使い、態度など、若い世代は常識がなりなすぎる」などは、もっともなご意見です。では、その違いを埋めるために、どうしたらいいのでしょうか?

私達は、部下が上司に合わせるのでも、上司が部下に合わせるのでもなく、第3のアプローチ方をとっています。それは、「お互いを知ること」です。私達は、相手を見るときに自分自身の価値観のフィルターを通して相手を見ています。「こんなの常識だろ・・・」「一般的に考えれば・・・」と言っている時にさえ、自分自身のこれまでの体験や知識によって形成された価値観に基づいて発言していることが多くはないでしょうか。

「本当に相手を知る、理解する」ために、このような自分自身の価値観を一旦脇に置き、「目の前の相手は一体どういう時代背景、経済環境、教育の中で育ってきたのだろうか」と、頭を廻らせていただきます。古いフィルターを外して、新しいフィルターで相手を見ることによって、これまでとは違った視点で相手の発言、行動を捉えることができるようになります。

それではここで、新しいフィルターで相手をみるためのヒントをご紹介します。 人間は、新しい物事を認識する際に、自分自身の偏見や先入観などによって、歪めた形で情報を処理をしてしまう傾向があります。この歪みのことを【バイアス】と呼びますが、その最たるものがRosy retrospection、直訳すると【バラ色の回想】です。

このバイアスは過去の出来事を当時の評価よりも肯定的な評価で思い出してしまう記憶の歪み、つまり過去を美化するバイアスです。  この【バラ色の回想】は、過去の“やや良い”程度の評価はより良い評価に強調され、“やや悪い”評価は記憶に定着せずに忘れ去られ、非常に良い/悪い評価はそのままに記憶されるという特徴があります。

 自分自身の社会人1年目、5年目、10年目の記憶を遡ってみていただくと、思い当たる節があるのではないでしょうか?

 お恥ずかしながら、私自身も職場において、自らの【バラ色の回想】の存在に気がつく瞬間があります。例えば、新人がお客様に対して敬語をうまく使えなかった時に「私が新人だった時はもっと上手く対応できたよな・・・」と思ったり、期限どおりに書類を提出しなかった時に「仕事の期限を守らないなんて、基本が出来ていない証拠だ」とため息をついたり。美化された自分の若い頃と比べて、目の前にいる後輩はどうしても劣って見えてしまうのです。

もちろん、年上から年下だけではなく年下から年上に対しても、モデルとなる上司や先輩、自分の価値観などのフィルターを通して相手を見ることで、目の前の先輩や上司に対してネガティブな評価をしてしまうこともあるでしょう。実際に、みなさんのアンケート結果でも、「最近の若者は保守的な傾向が強い」「新しいことにチャレンジする意欲が低い」「時代の流れの速さについていこうとしていない」など、自分とは異なる世代に対して様々な捉え方をしていらっしゃることが分かります。

 このように相手に対する歪みのバイアスは、自分の価値観を裏付ける証拠を優先させ、逆に自分の価値観にそぐわない証拠を排除してしまうという傾向にあります。例えば、「最近の若者はみんなこうだ」、「やっぱり彼は外資系出身だから」などと口に出して意識化することで、よりネガティブな面ばかりが目に付きやすくなってしまいます。

『まずは、お互いに価値観が違うということを十分認識した上で、相互理解のために何が必要かを話し合うことが慣用』というアンケートの最後のご意見にある通り、組織のパフォーマンスを高めていくためには、価値観の違いをネガティブなものとして捉えるのではなく、その違いをどう活かしていくのか、という視点でコミュニケーションをとっていく必要があるのではないでしょうか。

以前、非常に強力な【バラ色の回想】を持っていたクライアントがいました。「何度言っても新聞も読まないし、スキルアップしようなんて気が全く感じられない部下に困っています」と泣き言にも似た発言を繰り返す某部長Sさん。彼にこんな質問を投げかけてみました。「部下には、自分にはないどんな強みがあると思いますか?」「1つの行動に対する評価を、部下全体の評価としていませんか?」「自分の若手時代には、上司に対して何を思っていましたか?」「部下は自分に対してどんな強みがあると認識していると思いますか?」Sさんは遠くを見つめながら、冷静に自分の過去を振り返り始めました。そして、最終的には、「確かに、出来てないことばかりを探そうとしていたかもしれない。そもそも部下のことを知ろうとさえしていなかった気がします」と一言。

Sさんは今、部下についての新しい発見をするべく積極的にコミュニケーションをとり、少しずつ部下へのネガティブな評価を壊す作業を進めています。そして、部下の意外な特技や強みを発見するなど、手ごたえも感じているようです。

次に会う価値観の違う相手に対して、これまでのバイアスを一旦脇においてコミュニケーションをとってみませんか。そこには、これまでとは違う相手が存在しているかもしれません。

シニアビジネスコーチ 山本 多佳子 氏
プロフィール
シニアビジネスコーチ 山本 多佳子 氏
東北大学経済学部経済学科卒業
株式会社富士総合研究所(現:みずほ情報総研株式会社)において、決済系システムを主軸に多業界に及ぶ業務アプリケーションシステムの設計・開発・運用、プロジェクトマネジメントに従事。同社人事部在籍中は、採用戦略の立案・実施、業務効率化を実現。
ビジネスリーダーを対象としたエグゼクティブコーチングの他、コミュニケーションスキルやリーダーシップ向上を目的とした 集合型トレーニングも年間80回以上行う。前職でのプロジェクトマネジメント経験を活かし、チームマネジメントや組織パフォーマンス向上などの視点から『結果を出す組織を作るためのコーチング』を実施。
共著:『コーチングの基本』
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