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  1. 週刊ホテルレストラン8月20日号トップインタビュー掲載

「緩慢な自殺」は、一端デフォルトに戻すことでしか食い止めることはできない

週刊ホテルレストラン8月20日号掲載 トップインタビュー(株)キュービック代表取締役 油井啓祐氏

---ホスピタリティ産業の難しさは感じていますか

 いえ、まったく感じていません。と申しますか、「ホスピタリティ」という言葉は一切つかっていません。当たり前の事なのに、それを特別の事のように言うこと自体がおかしいと思います。本当のおもてなしをしている人たちに対して失礼だと。うちで言っているのは、「親切」、「清潔」、「あいさつ」この3つだけです。当たり前の事ですよね。

 スタッフには、「中途半端な接客をするのだったら、ずっと掃除をしていてください」と言っています。掃除をしている人の前で、その場を汚したり煙草の吸殻を投げ捨てたりする人はいません。お客さまもお行儀よくなります。それ以上に、一人目のお客さまも、150番目のお客さまも同じお金を支払っているのです。当然同じ状態で提供しないといけない。それさえできていないでホスピタリティもなにもありませんよね。コモディティでインフラ的な商品サービスを、リーズナブルな価格で、しかも平等に提供するとなると、ホスピタリティという付加価値をつけることは不可能だと判断しました。ですので、インフラに限りなく近いベーシックなものだけを徹底して提供するようにしたのです。

 われわれはホテル業ではないと考えています。われわれは「スリーピングハブ」であって、ホテル業界のヒエラルキーには一切属さないのです。「都市の中の寝床」というコンセプトで、マーケットを捉え、別のプラットホームを作るつもりです。

 ナインアワーズとホテルの関係は、iPhoneと携帯電話の関係と同じです。携帯電話には必ずテンキーがありますが、iPhoneにはありませんよね。テンキーがなくてはならないから二つ折りにしなければならないとか、スライド式にしないといけないとかいう方向で考えないといけなくなります。iPhoneは、テンキーを捨てました。捨てることによって、別のインターフェイスを追加することができたんです。iPhoneユーザーのほとんどは、iPhoneを携帯電話だと思っていないでしょう。

 ナインアワーズは、「部屋」という概念を捨てました。機能にフォーカスしました。われわれが、ナインアワーズがホテルとは一線を画しているのは、それと同じ理由からです。

 都市の中で、短時間快適に深い眠りを享受したいというニーズ、夜遅くまでお客さんと食事をし、翌日は朝早くから仕事に出かけなければならないというときには、寝ること、シャワーを浴びること、身支度することの3つしかしないわけです。それが一流れで合理的にでき、一つずつのクオリティが高いものが欲しい。こうした、ナインアワーズの存在がちょうどいい日は、多くの方が年に何回かは持つものです。われわれはそのニーズにアジャストしていこうと考えたのです。ですので、空港のトランジット時などには最適でしょうね。深い眠りを数時間してシャワーを浴びて身支度してリフレッシュするだけなのに、余計なものはいらない。それだけできればいい。そんなニーズにアジャストした形がナインアワーズなんです。

---最初に京都に出されたのは、やはり世界を見据えてのことでしょうか

 いや、最初からそこまで考えてのことではありません。でも、デザインとホスピタリティは日本が世界に誇れるものだと思います。これから工業製品の輸出というビジネスモデルで外貨を稼ぐことができなくなる時代になりますが、それに代わる日本の価値は、デザインとホスピタリティだと思っていて、それをナインアワーズというパッケージにして世界に売っていきたいですね。

 いま、15~16件くらい、出店しませんかというオファーが海外から来ていますが、まだベース固めすらできていないので、お待ちいただいている状態です。

 事業パートナーを探している最中です。運営だけさせていただく運営受託契約も視野に入れています。ナインアワーズの価値やビジネスモデルを広めることがわれわれの仕事であって、不動産を持つことではありませんから。

油井啓祐(Yui Keisuke)氏
株式会社キュービック代表取締役。1995年株式会社ジャフコ入社。国内ベンチャー企業への投資業務に従事。99年父の逝去に伴い、株式会社キュービック代表取締役に就任。04年キュービックが保有する「カプセルイン秋葉原」の 事業再生を本格化。 06年新事業の構想に着手。07年柴田文江氏にビジネスモデルとデザインに関するディレクションを依頼。 08年「カプセルイン秋葉原」は開業20年目にして過去最高益・最高人泊数を達成。09年「カプセルイン秋葉原」は周辺の再開発に伴う立ち退きにて閉館。09年「カプセルイン秋葉原」の再生ノウハウを活かして全国の カプセルホテルの再生支援事業に着手。 2009年新事業として「ナインアワーズ」の1号店を京都に開業。

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