「緩慢な自殺」は、一端デフォルトに戻すことでしか食い止めることはできない
週刊ホテルレストラン8月20日号掲載 トップインタビュー(株)キュービック代表取締役 油井啓祐氏
その新感覚のデザイン性で注目を集めるナインアワーズ。しかし、そのビジネスには、さらに斬新なコンセプトや価値観があった。「部屋」という概念を捨て、「スリーピングハブ」というコンセプトで世界展開を図るナインアワーズの油井社長の軌跡とビジネス哲学を紹介する。
カプセルホテルのビジネスは嫌いだった
学校を卒業するころ、私は父親がやっていたカプセルホテルのビジネスが好きではありませんでした。酔っぱらったサラリーマンやお金のない人が泊りにいく場所という非常にネガティブなイメージがあったのです。それで、野村証券グループのベンチャーキャピタルであるジャフコという会社に就職しました。
ベンチャーキャピタルの仕事は、まだだれも評価しないときに有望な起業家、ビジネスを発掘し投資をする仕事です。その企業が成功に向けて軌道に乗ったり、上場したりすると、また違う金の卵を見つけて去っていく。しかも、表舞台には上がらない。ここに美学を感じたんです。男子一生の仕事だと思いました。米国では、アップルコンピューターに投資したアーサーロックなど、そうそうたるベンチャーキャピタリストがいて、彼らが今のITの繁栄の基をつくったのです。だれも見たことのない産業の未来を信じて資金的な支援をする。そういう存在に魅かれていました。
ところが99年に父が急逝しました。そのとき、初めてキュービックの財務諸表を見たんです。びっくりしました。借金が5億、キャッシュが1000万円しかなかったんです。どう考えても後数カ月で倒産という状態でした。それでも、父が残した会社を棄てる勇気もなく、借金ごと相続しました。ただ、カプセルホテルは好きではなかったので、財務面ばかりのやりくりをして、現場の運営などにはまったく関与しなかったんです。
あとは、会社の債権を私個人が買い取るなどをして、借金を5000万円ほどに圧縮していったんです。このくらいの額なら何をやっても返せていけるだろうということで、もし本腰を入れてやるんだったら、本気でやろうと思ったのが、私のこのビジネスのスタートです。
本腰を入れて考えると不思議なもので、「もしかしたらカプセルホテルは、世界に通用するビジネスモデルかもしれない」と思うようになっていきましたね。

